東大卒ママがすすめる習い事は?→そろばん、習字

2/4(日) 11:30配信

うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や3歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。

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よく、幼少期の子どもに「何を習わせるのがいい?」「やはり塾に入れるべき?」という質問をされます。もし中学受験をするなら、受験の問題が「植木算」や「鶴亀算」など、学校の勉強とまったく異なるため、塾は絶対に必要です。これらは「教わらないと解けない問題」で、東大生や京大生でも中学受験を経験していなければ悩んでしまうと言われています。

もちろん、親が一方的に決めるのではなく「子どもがやりたがっているか」を聞き、子どものやる気を尊重するのが大前提です。私自身が勉強嫌いで、塾に入ってもすぐやめてしまったのに、それを棚に上げて息子にばかり「塾にいきなさい」などと言う権利があるわけないのです。よく言うのですが、東大生は親に「勉強しなさい」と言われたことがないという人ばかりです。無理やりやらせると、人間の本能である「自分の行動は自分で決めたい」という心理的リアクタンスから勉強嫌いになって、かえって勉強しなくなる確率が高くなります。

そのため単純に小学生で「学校の勉強を補いたい」「他の子より少し差をつけたい」という理由で塾へ通わせるのなら、必要も意味もないと思います。授業で分からない箇所は先生に質問するか、親が説明してあげればいいだけの話です。

私が小学6年生のときのことです。英語の塾に通っていた友人が「Notebook」と紙に書いて「これが何かわかる?」と聞いてきました。私は、英語なんて習ってなかったので「わからない」と答えると、相手は「ノートブックだよ」と誇らしげに教えてくれました。そのときは純粋に「英語を知ってるなんてすごいなぁ」と感心しましたが、中学に入った途端、授業の初期で教わる「Notebook」は誰もが知っている簡単な単語に成り下がりました。それに、中学1年生は600語程度しか英単語を覚えませんが、高校で覚える単語は3000語もの数に増え、単語帳を片手に大量の単語を一気に暗記するようになるわけです。そう考えると、小学生の期間に、他人よりほんの数単語多く覚えるために、お金を払い時間を使って塾に通う意味があるのかは疑問です。

私が、幼少期におススメしたい習い事は、断然「そろばん」です。夫が小さい頃に習っていたのですが、受験のときの有利すぎる話を聞いて「なにそれズルい!」と悔しく思いました。彼は、数学や科学系の教科にある数桁の足し算なんかはもちろん、2桁×2桁の掛け算も、紙に書かずに頭の中で計算できました。しかも、とにかく計算スピードが速い。私は非常に計算が苦手で、遅いうえにミスも多くて、問題集を早く進めるために計算機を使って解いていたほどだったので、「私もそろばんを習っておけばよかった!」と後悔しています。彼曰く「そろばんを習っている人は頭の中でそろばんが浮かんでくるようになる」とのこと。それに、受験や勉強だけではなく、日常生活の計算にも一生役立つわけですから、非常にお得な習い事だと言えます。

そろばんをはじくように、指を器用に動かす能力を「巧緻性」と呼びます。指を上手に動かすことは、脳を発達させると言われています。そして、神経系は、3歳から4歳あたりが最も発達しやすい時期だと言われています。有名小学校のお受験の世界では、線を書いたり、紙をちぎったりするのを見て、手先の器用さから将来性を判断するそうです。認知症だった祖母も、指を動かすためによく施設で折り紙をやっていました。指を使って玉をパチパチと動かしながら頭も使うそろばんは、脳神経を刺激するのにピッタリです。

思い出してみると、東大医学部には「小さいころからずっとピアノを習っていました」という学生が何人もいました。当時は「なんでもできて嫌みな人達だな」なんて思いましたが、考えてみれば左右で異なる指を一本一本素早く適切な場所に置いていくピアノは、「巧緻性」を高める練習としてふさわしい習い事です。かくいう私も、実はピアノを習っていました……。まあ、小学生で2年もやらないくらいで早々にやめちゃいましたが。

手は、意外に自分の思い通りに動かないものです。たとえば、1本のまっすぐな線を30センチくらい引いてみてください。定規がなければ、どこかでふにゃふにゃ曲がって、ビシッと綺麗には引けないはずです。でも、聞くところによれば、設計士さんなんかは定規がなくとも美しい線を引けるそうです。練習次第で、手の動きと脳の動きを一致させられるようになってくるとのこと。

そこで、私の経験として「習っていて良かった」と思うのは習字です。お手本を見ながら手を動かして、自分が書きたいと思った場所にむかって筆を置いていくプロセスは、集中力もつくし、器用さもアップします。

私は習字も小学生の1年間くらいでやめちゃいましたが、振り返るとなかなかおすすめの習い事だと思うのです。夫は、そろばんを習うことで「この時間はこの作業をこなす」という「習慣」の基礎が身についたと言っていました。忍耐力や、粘り強さは、6歳から13歳くらいまでが最も発達しやすい時期です。そう思うと、習字はものすごく集中するし、通うことで習慣も身につくし、手先も器用になります。さらに、字が綺麗になる! という点は、なかなかポイントが高いかと。

私は1級でたいしたレベルではありませんが、それでも「字が下手で恥ずかしい」という悲しい状況に陥ったことはありません。夫は、言っちゃ悪いですが字が驚くほど下手くそです。東大出の医者という肩書に救われているようなもので、それを知らない人が見たらきっと「なんだか頭悪そう」と思うであろう字です。夫に頼まれて、年賀状の宛先を代筆したこともあるくらいです。

そうしたことを考えると、幼少期は塾のように「知識を先取りする」という、後から取り返せるようなものよりも、「積極的に手や指を動かすこと」「集中する習慣をつくれること」「日常でつかえること」がそろっている習い事をするのが、子どもの将来のためになるのではないでしょうか。

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